高速道路を降り森の田舎道を抜けていくと瀟洒な建物が目に入ってくる。「うぉーすごい」思わず感服する。大きな横長の窓は自由で開放的でナチュラルな内部空間を映し出し、まるで近代建築家ル・コルビュジエが手掛けたようだ。
感動しつつ、クリニック内部に案内いただくと、在宅訪問のスタッフが機能的に動ける動線や効率的な物品管理のありさまがすぐ目に飛び込んでくる。2階はまさしくピロティ―!壁のない開放的な広い空間はまさにファサード!柱さえ熱帯魚が泳ぐニッチとなって視界を遮ることはない。階段は大学の講義室を模し、木の滑り台やカプセル空間、ハンモックのある休憩室などが遊び心を促し、さらに医療機関の緊張感をほどいてくれる。緊張して外来に来られる初診の患者さんも先ずは場に癒され、そして石賀先生の前向きで優しい声かけに安心されたようだ。
訪問診療に出向けば、先生や看護師、スタッフが代わるがわるに患者さんに笑顔で声をかけながら効率的に診療処置を進めていかれた。痛みや苦痛も軽減されて自宅で安心して過ごされているようだ。患者本人はもとより家族も心から頼りにされていることが伝わってきて、患家の出先でも安心感や癒しを届けているのだとわかる。良質な在宅医療はリーダーはじめスタッフの人間性が反映されるものだ。
データも素晴らしく、北勢地域の幅広い地域を網羅し、年間450人を超える日本トップクラスの看取り数を出し看取り率9割、そのほとんどが癌や病態の重い方だそうで、質だけでなく量的にも日本の在宅医療の先端を走っている。医療情報をこまめにニュース新聞としてまとめ、栄養や免疫力の向上、生活支援の知恵、最期の心構えなどをわかりやすく提供されていた。なるほど地域に根ざした活動を丁寧にされていることも信頼されている理由なんだ。
ほどなくクリニックに戻り、管理栄養士が作られる昼食をレストランのようなキッチンでいただき、ほっこりした。
1週間のお看取りをスタッフ全員で振り返るデスカンファレンスにも参加した。いろいろな機会を設け、スタッフが集う場や時間を演出して大所帯の求心力を高めるなど、マネジメントも抜かりがない。全国から見学や研修、取材が絶えないのは、ここ「いしが在宅ケアクリニック」の魅力がいっぱい輝いて、学びとなっているからなのだろう。
今日研修をさせていただく機会をいただき、とても真似はできないものの、それぞれの地域に応じて、そこに暮らす人々を魅了する在宅医療の創造がポストコロナの社会には必要になってくるのだろう。このような機会をいただいたことに石賀先生はじめスタッフの皆様に感謝します。