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研修を終えた方のコメント

研修医の

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当院で研修を終えられた医師たちの感想やコメントなどを掲載します。

2024年5月より1カ月間、地域医療研修としていしが在宅ケアクリニックで在宅医療を学ばせていただきました。私は四日市市内の総合病院で勤務しており、研修医として働き始めてから約1年が経ちます。普段は救急外来に搬送された患者様や、病棟で入院されている患者様を相手に診療を行っていますが、病院と在宅で行っている医療では想像以上に異なることが多く、様々な気づきを得ることができました。

その中でも何より感じたのは、患者様やご家族の方の表情の違いです。普段自分が勤務している際にはあまり見ることができない笑顔が多くの人に見られたことが印象的でした。病院では、例えば救急外来に搬送された患者様は、症状としての苦痛がある中、訳も分からず診察や検査が進んでいき、時に「まな板の上の鯉」などとおっしゃられる方もいます。ご家族の方も診断に至るまで待機されており、突如として入院加療を勧められ、一定期間離れて暮らすことになります。病棟で入院されている患者様や面会に来られるご家族の方もしかり、いつ自宅に帰れるのだろうかという不安感や緊張感が表情に現れていることが多いように思います。この表情の違いは急性期疾患か慢性期疾患かの違いも当然あるかと思いますが、住み慣れた自宅で診療を受けることができる在宅医療ならではのことと感じました。実際に「家におらしてもらえるだけで幸せ」という患者様の声や、「毎日顔を見られるだけでありがたい」というご家族の方の声を聞くことができ、その言葉が在宅医療の魅力を表しているように感じました。また、在宅医療では患者様の自宅に医療者側がお邪魔するという形をとっているため、普段患者様がどのような環境で生活されているか、ご家族との関係性から死生観までも、患者様の素の部分を知ることができます。一方、実際に訪問診療をさせていただくと、患者様の日常に踏み込んでいるという感覚に緊張感を抱き、距離の近さや信頼関係など難しく感じることも多々ありました。一緒に訪問診療をさせていただいた先生方や看護師・スタッフの方々が患者様と適切な距離感で接し、信頼関係を構築されている様子を見学していると、自分のコミュニケーション能力などがまだまだ未熟であると感じました。「病気ではなく、人を見る」という言葉がありますが、普段自分がいかに疾患に対しての診断・治療を目的とする会話しか行っていないかを思い知り、自分に足りないものを再認識させられた1カ月になりました。

また、今回の研修を通して末期癌に対するイメージが大きく変わりました。特に「癌は寿命が短くなるのではなく、老化が早くなる病気」という石賀先生の言葉には感銘を受けました。余命が〇年ではなく、〇年で数十年分の年齢を重ねるから、徐々に自分でできないことが増えていく。だからこそ、その中で患者様やご家族の方にいかに充実した時間を過ごしてもらうかということを医療スタッフの皆様が考え、実践することで患者様やご家族自身も前向きに日々を過ごすことができる。そのように医師・看護師だけでなく、他職種の方が患者様を中心に日々連携し合って在宅医療に向き合っている様子を間近でみることができたことは大変貴重な経験になりました。その他にも医療用麻薬の使用方法や検査が限られている中での身体診察の重要性など、院内の研修とは全く違う視点から非常に勉強になることばかりで、私自身も充実した日々を過ごすことができました。

最後になりましたが、石賀院長をはじめ、医師、看護師、スタッフの皆様、1カ月という短い期間でしたが、たくさんの貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。今回の研修で学んだことを活かし、患者様やご家族の方に笑顔になってもらえるような医師になりたいと思います。

私は市中の急性期病院で研修医として約2年間勤務してきました。急性期としての加療が終わるとリハビリ転院や慢性期病院に転院される方や、在宅医療に移行される方がたくさんいらっしゃいましたが、その先で何が行われているかはほとんど知りませんでした。

初めの1週間はいろいろな先生につかせていただき、それぞれの診療を見学させていただきました。その後は徐々に医師は私のみで、看護師さんやアシスタントさんに付いていただき診療を行わせていただきました。ローテーション初期は、まず医療スタッフ自らが出向き患者様のテリトリーに入り診療を行うという特殊さに総合病院との大きなギャップを感じました。行える検査も当然ながら限られており、普段のように気軽に採血や画像検査ができない中で如何に判断し、必要であれば搬送を考えるかという難しさを実感しました。また、身体診察や問診がいかに大切か、普段自分がどれほど検査に頼りきってしまっているかを再認識させられました。先生方を見学させていただいていると、身体所見と問診が主であり、採血は最低限、画像はポータブルエコーまでで判断、という普段の自分では考えられないほどシンプルな診察をされていて非常に勉強になりました。

ギャップだけではなく「むしろ在宅でここまで医療行為ができるのか」ということにも驚かされました。「さすがに点滴が必要になれば病院に行くのかな」と考えていましたが、自宅で点滴もできると知り、さらにそれぞれのご自宅で点滴棒を自作していただき、抜針も覚えていただいたりと、やろうと思えばいくらでも医療行為ができるのではないかという可能性さえ感じました。在宅酸素療法や在宅人工呼吸器など、言葉で聞いたことはあっても実際に見るのは初めてでした。

また在宅医療ならではの患者様として、癌終末期でBSC方針となっている方の管理や、老衰でお見取り方針となっている方の訪問もさせていただきました。癌終末期の方で難しいのは、患者様自身の受け入れに関してだと感じました。特に若年の方では、自分が癌になって死が近いというのは受け入れ難い事実であり、実際に訪問させていただいた方もほぼ全く受け入れられていない方がいらっしゃいました。医療スタッフやご家族様がしようとしたことを全て拒否され、外部からの介入もして欲しくない、といったご様子でした。もともとが強がりな性格だと家族様は仰っていましたが、それ以上に自分が癌終末期の患者であることを受け入れられておらず、この先自分はどうなってしまうのか、家にやってくるこの人たちに何ができるのか、といった不安でいっぱいなのだろうという印象でした。まだその方は在宅医療の介入を始めた直後であり、その後私が訪問する機会はありませんでしたが、担当されていた先生は、回数を重ね信頼を得ていくしかないと仰っていました。かなり根気の必要なことだと思いましたが、自宅にいることを望む患者様やその家族様の要望に最大限寄り添おうとする姿勢に感銘を受けました。

また全体を通して、家族様や他の福祉のサポートの重要性を感じました。上述した点滴のことや、人工呼吸器管理をしている方の吸引処置、薬剤管理など、家族様の手が無ければなし得ない部分も在宅医療にはたくさんあり、医療者以上の時間をかけて患者様に当たっていただき在宅医療を可能としてくださっている家族様には感謝が尽きないと感じました。 患者様の背景が様々である以上、やはり家族のサポートが受けられない方もいらっしゃいますが、そんな時に訪問看護や訪問ヘルパーの方はもちろんのこと、さらに近隣の方が援助してくださっている例もあり、たくさんの人に支えられながら1人の患者様の望みを叶える尊さを目の当たりにしました。

普段の病院とのギャップに驚き、単独で訪問診療を行うのに緊張した1ヶ月間でしたが、その分たくさんのことに気付かされ、感銘を受け、後期研修へ向けて少し逞しくなれた1ヶ月でもありました。短い期間ではありましたが、見学をさせていただき指導をしていただいた先生方、たくさんご迷惑をおかけしても温かく見守って診療を共にしていただいた看護師さんやアシスタントさん、ケアマネジャーさんや事務の皆さん、お世話になりました。ありがとうございました。