- By: 研修医2年目 加藤 正寛 先生
- 1~25.Apr.2025
- dr いなべ総合病院
このたびは、いしが在宅ケアクリニックにて貴重な研修の機会をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。約1カ月間という限られた期間ではありましたが、石賀院長先生をはじめとする先生方、看護師の方々やスタッフの皆様には温かくご指導・ご鞭撻をいただき、非常に学びの多い時間となりました。
在宅医療では、患者さん一人ひとりの「自宅で過ごしたい」、「自宅で最期を迎えたい」という願いに寄り添い、医師としてその想いを叶えるためのサポートをしていく姿に深い感銘を受けました。病院とは異なる環境での医療提供には、臨機応変な対応や多職種との綿密な連携や信頼関係、そして何より配慮や調整力、コミュニケーションの重要性を痛感しました。そのような環境で日々の診療をされている皆様のサポートもあり、とても充実した研修になったと考えております。
様々な疾患の患者さんの訪問診療や往診に同行や診察等をさせていただきました。また、看護師さんとアシスタントさんと一緒に医師として1人で訪問診療をさせていただくことで、より明確に様々なことに気がつくこともできたと考えています。
例えば、パーキンソン病といったひとつの疾患でも患者さんの状況は様々でした。共倒れが心配になるほどとても熱心に看病されているご家庭もあれば、上手に介護サービスを取り入れていらっしゃるご家庭もありました。COPDの患者さんでも、ライブに行くような工夫をされているような人まで、病気を抱えながらも人生を楽しく過ごされている姿が印象的な方もいらっしゃいました。
そのような場面で、具体的にどのような医療・介護サービスが利用できるのかという視点が病院の中では想像できないものも多数ありました。例えば、近くのどの事業所が患者さんの必要とする看護における対応が可能か、といったことも含まれます。
他にも、訪問診療や往診において、病院とは異なる環境で縫合等の処置をしたり、在宅酸素療法(HOT)に触れたりすることも初めてでした。病院とは異なる限られた資源や制限のある環境で、患者さんに質の高い医療を提供していくことへの意志を感じました。患者さんが「お家で過ごしたい」という気持ちに寄り添いながら、必要に応じて病院へお願いすべきものはお願いするという医師としての技量や判断も試されていると感じました。
ガン末期の患者さんにおいては、残されている時間や診察の必要性から、先生方の人数が多いことで専門性を活かした柔軟な対応ができることも印象的でした。緩和ケアはもちろんのこと、患者さんのみならず家族にも心配をかけないように必要な時期になれば、診察や処置に加えて心の準備といったことまでコーディネートされていることが印象的でした。
また、ご自宅に訪問させていただくことで垣間見える患者さんの生活環境や人柄、興味のあるものなど、社会的背景や生活背景ともいえる情報、患者さんのこれまでの人生ともいえる情報がたくさんありました。自宅のベッドサイドには情報が詰まっており、病院のベッドサイドだけでは得られない深い学びを与えてくれました。私自身の想像していた以上に様々でした。その中で、ある疾患を持つ患者さんではなく「〇〇さん」として接することの意味を強く実感しました。
また、そのように患者さんに興味を持つことで、患者さんはもちろんのこと周囲の些細な変化に気がついたり、コミュニケーションの糸口を見つけるきっかけになりました。そこから、ようやく信頼関係が築けて介入ができるようになったり、介入がしやすくなったりするといった側面も感じました。
在宅で行える手技や限界、病院での医療との違いも体感しながら、医師としての関わり方を改めて考える機会となりました。今回の経験を今後の初期研修、そして医師としての歩みに確実に活かしてまいりたいと思います。
最後になりますが、いしが在宅ケアクリニックの皆様には改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。