私は普段急性期病院で勤務しており、主に救急外来対応や入院患者様に対する診療を行っています。研修医2年目になり、そのような患者様が退院や転院した後、どのような経過をたどっているのか、看取りとは実際どのようなものなのかということに興味を抱き、いしが在宅ケアクリニックで訪問診療を学ばせていただくことにしました。
研修が始まりまず最初に感じたことは、総合病院との役割や目的の違いです。在宅医療では、急性期治療を終えた方や癌末期の方など様々な病状の患者様を診療します。そこで重視するのは、病態の安定化だけではなく患者様のQOLを維持すること、つまりは患者様やご家族の要望に可能な限り寄り添う努力をすることです。入院していると、疾患を治療することに重きを置きます。
もちろん、状態を改善しないことには救命できないため、入院加療もなくてはならないものです。しかしながら、どうしても総合病院では患者様の背景を考慮し、ご期待に沿う対応まで行うのは難しいのが現状です。在宅では、最後の最後まで患者様が笑顔で過ごせるように工夫し、柔軟に対応できます。そこが在宅医療の最大の魅力だと思いましたし、患者様にとっては住み慣れたご自宅で医療を受けられるというだけでも、安心感や満足感を得られるのだと感じました。
また、今回の研修は、自分の知識不足や診療能力、コミュニケーション能力の未熟さを痛感した1ヶ月でもありました。総合病院では、問診や身体診察も当然行いますが、行える検査の種類やスタッフの数が潤沢であり、病態の判断材料としても各種検査が大きな役割を担っています。それが当たり前になっている環境では、検査に頼り切りの診療となっていることに気付かされ、患者様のお話や身体所見から病状を推察することの重要性や難しさを再認識することができました。加えて、褥瘡処置や疼痛コントロールの薬剤調整など、先生方や看護師の方々の対応を実際に見て勉強できたことは、得られるものが大きかったです。
信頼関係の構築という点では、在宅医療において非常に重要でありながら、最も難しいものだと感じました。先生方やスタッフの方々は、適切な距離感で接し、円滑に会話をして患者様やご家族の感情や思いを引き出しておられました。それは信頼関係が形成されていなくては成立しないと思いますし、自分にはまだその自信がありませんが、上記の件も含めて今後の課題を見つけられました。
最後になりますが、院長の石賀先生をはじめとして、スタッフの皆様、お忙しい中丁寧にご指導いただき誠にありがとうございました。慣れない在宅医療でご迷惑をおかけすることも多かったですが、優しくフォローしていただき、楽しく充実した1ヶ月を過ごすことができました。今回の研修で得た、知識や気づき、経験を今後の診療に活かして、課題も克服できるよう日々邁進します。短い間でしたが、大変お世話になりました。